MoonStar

Vol.3 奥由美子さん
(ナツメ書店/店主)
POST:21.05.07.Fri

海の見える町。静かでのんびりとした時間の流れる町。愛着の湧く町......。

そんな形容の似合う福岡県西戸崎の地で、コーヒー店と併設された小さな書店・ナツメ書店。古きを生かしリノベーションされたお店で、店主の奥由美子さんにお話を伺いました。

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日常に馴染む心地良さを、お店から

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元会社員の旦那さまとこの地に移り住み、コーヒーをたしなみながら本を読むことのできる空間をつくった由美子さん。もともと古い建物から感じられる時間や雰囲気が好きだったとのことで、現在の店舗も長い間空き家になっていた元時計店を改装し開店したのだそう。きれいにリノベーションされてはいるものの、「なるべく元の良さを生かしたい」との由美子さんの希望で、窓枠や吹き抜けになった屋根の梁からは受け継がれてきた時代が感じられました。

「日常にある存在だけど、少しだけ特別な。地元のひとでも遠くのひとでも、来てよかったなって帰り道に余韻が残るような場所にしたくて。」

由美子さんのそのことば通りナツメ書店は、改装前の面影を残したその佇まいも相まって、地元のひとにも気軽に入ってきてもらえる心地よい空間として愛されているようです。

 

その一冊が誰かにとっての特別となるように......

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そんな由美子さんが書店を営むうえで大切にしているのは、背景を伝えることだと言います。

「私が良いと思って勧めてもその時のその人にマッチしなければ、特別で大切な一冊にはならないと思っています。本でも靴でも、お客様のもとに届く前に作り手の手を離れて行く。だから本屋として、例えば選書を頼まれた時には、今その人にどんな本が良いのか、をできるだけ探って紹介するようにしています。その本の良さを伝えるための手段として読んだ感想を伝えるのではなく、出版社や著者の情報や裏話、装丁へこめられている想いなど、なるべく自分のフィルターをかけず伝えられるよう心がけていますね。」

実際に由美子さんのお話をきっかけに、本単体ではなく出版社のファンになる方も多いのだそう。

 

伝えたい想いを、必要としている方へ

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コロナを経て、これから先の書店の在り方を改めて考え直すきっかけにもなったという由美子さん。姿カタチが変わるとしても変えたくないものは、「自分が『良い』と思ったことをより丁寧に誠実に伝えること」だと言います。オンラインショップにも挑戦してみたことで、想いを伝えることに限界はないと感じたのだとか。

「カタチにこだわらずとも、伝えたいことを受け取ってくれる人はたくさんいる。いかに多くの人に届けられるか、という視点ではなくて、コロナをきっかけに、必要な人のもとへ必要なモノを届けられる魅力も実感しました。」

 

「ずっと大切にしたい。」そう思ってもらえる本を届けたい

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由美子さんの思う「良い本」は、10年後もその先も、ずっと大切にしたいと思われる本なのだとか。ナツメ書店に並べられた本は決して多くはありませんが、普通の書店には並べられていない本もたくさん。出版社から発売されているものから個人でつくられたものまで、その幅広さゆえ、一見すると由美子さんの「好きな本」を並べているかのように思えます。しかし書店に並べられている本は、すべて「良い本」なのだと言います。

その証拠に、ナツメ書店に置かれた本は装丁までこだわられたものばかり。ひとめ見るだけでたくさんの愛情や想いが込められてつくられているものだと分かります。

 

本も、もちろん靴も。たくさんのこだわりと愛情を込めてつくられたモノだからこそ、受け取った人もそれが永く一緒にいたい特別な存在だと思えます。普段は知りえない作り手の想いや背景を由美子さんが語りかけることで、誰かにとっての「特別な一冊」が生まれていくように。ずっと一緒にいたいと思える存在は、だれかの「想い」あってこそなのです。

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