子供たちといっしょに歩く、「歩育」のすすめ

カプセルの中で子供が壊れる

外で遊んでいる子供を見かけることが、ずいぶん少なくなりました。学校から塾へ、教室へ。遊びといえばテレビゲーム。子供たちは「カプセル型の閉塞生活」を強いられているのです。

◎身体に異変
カプセルの中で子供たちの身体活動量は絶対的に不足し、体力・運動 能力は低下。直立不全、扁平足、脊柱側湾等の身体のゆがみ、小児生 活習慣病の子供さえ増加しています。

◎心に異変
さらに自然と遠ざけられて「五感体験」の機会を失い、親の過干渉 や過保護によって自立障害に陥ったり、育児放棄等によって心の交 流体験を持たず、対人コミュニケーション能力の発達を阻害される 子供も少なくありません。

親の思いこみが危機を深める

このような幼少時の人間的接触の欠如と歩行不足は、人格中枢脳の成長を遅らせ、「ムカツク、キレやすい」子供たちを増やし、思春期挫折症候群、人格障害、行為障害等をも引き起こしかねません。にもかかわらず、きちんと子供と向き合わずに「うちの子は大丈夫」「勉強さえしていれば安心」と思いこむ親が多いようです。子供たちが人間としてすこやかに成長していくために、ほんとうにそれでいいのでしょうか。
子供たちの深刻な異変に、いま必要なのは「歩育」です。

グラフ

歩いて培い、歩いて学ぶ

歩育とは「歩いて、自然や社会に触れ、五感を開き体で学ぶ直接体験を通じて、 子供たちの豊かな心、生きる力を育てる」基礎教育です。

《歩くことは》

  1. 1.人間の基本であり、子供時代にこそしっかりと身につけることが必要である。
  2. 2.体を鍛え、心をつくり、生きる力を育む身体活動である。
  3. 3.五感を開き、呼吸を深め、脳を活性化するものである。
  4. 4.自然を学び、地域(郷土)を学び、感性を豊かにするものである。
  5. 5.友情や思いやりの心を育て,人と人との絆を深めるものである。

私たちはこの認識のもと、学校や地域にも歩育の実践を はたらきかけていますが、今日からでも実践していただける のが「親子で歩く」「家族で歩く」ことです。

子供の顔が輝いてくる

子供は本来、歩くことが大好きです。まずは近所の2km から。休日にはぜひ、自然の中へ「遠足」に出かけてくだ さい。子供の生き生きした笑顔を見つけてください。子供 と歩くことは、共に「人間らしさ」の原点に帰ることなの です。歩育は子供たちの将来の幸福の基礎となり、家庭 生活の幸福も高めてくれるに違いありません。


日本ウオーキング協会 会長 村山 友宏
1940年兵庫県生まれ。早稲田大学政経学部卒、東京工業 大学研究生修了。北山創造研究所取締役等を経て、現在: N P O全国街道交流会議副代表理事、N P O日本エコツー リズム協会理事、(財)日本ウエルネス協会理事、健康の 駅推進機構理事、健康日本21推進フォーラム顧問等。
日本ウオーキング協会(JWA)
日本ウオーキング協会(J W A)は東京オリン ピック開催の1 9 6 4年「歩け歩けの会」として 誕生。
「2キロまではいつも歩こう」を合言葉に 楽しいウオーキングを世界に広げる活動を 展開。近年は「歩育」の普及に力を入れている。